建設技術情報(第17期)TECH17

防災・減災、国土強靱化、インフラ長寿命化技術 / A-27 石積擁壁耐震補強対策工法

近年、激甚化する豪雨や大規模地震の発生リスクが高まり,壁体の一体性が損なわれた擁壁は,経年劣化により崩壊リスクが増大することが懸念される。
高度成長期に集中的に整備された宅地擁壁の多くは耐用年数を迎えつつあり、孕み出しやクラック等の変状について、早期に補強を行うことが重要である。また、文化的・学術的価値を有する石積擁壁については、その景観や構造的特徴を後世へ継承しながら安全性を確保することが求められている。本工法は既存石積擁壁の景観を損なうことなく補強でき、疑似擁壁化による補強効果で、補強材を短尺化できるため、敷地を越境せず、擁壁上部の建造物の基礎や杭にも干渉せず補強することが可能である。

本工法は,石積擁壁背面に造成した柱状構造体と水平補強材を一体化することにより,既存石積擁壁背面に新たな土圧抵抗機構を形成する補強工法である。本工法では,石積擁壁と柱状構造体に囲まれた補強領域を一体の重力式構造体としてモデル化する。この補強領域を本報では「擬似的擁壁」と定義する。
従来の鉄筋挿入工では補強材の周面摩擦抵抗によって背面土圧に抵抗するため長尺の補強材が必要となる。一方,本工法では補強材先端を柱状構造体に定着することで,補強材の引張抵抗に加えて柱状構造体の受働抵抗を利用できるため,補強材の短尺化が可能となる。
石積擁壁の天端から地山側へ一定距離離れた位置に直径φ100~200mm程度の柱状構造体を構築する。柱状構造体の根入れ長は根石長より500~1,000mm程度深い位置を標準としている。
柱状構造体はセメント系グラウト材を用いて構築し,内部に鉄筋を配置することで安定した抵抗体を形成する。柱状構造体は補強材との結合を通じて背面土圧を負担するとともに,地盤中において受働抵抗を発揮する主要構造部材として機能する。

NETIS登録No. CG-240016-A
文化財石垣・石積擁壁補強技術協会 事務局 担当 / 前田和徳